政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「あ、いえ、近くを通りかかったので。その後、佐々良さんの容態はどうですか?」
竹之内も和夫の入院は知っているため、その様子を聞きに来たようだ。
「だいぶ安定しています。ご心配をおかけしてすみません」
「いえ、それならよかった」
ふわっとした笑顔がとても優しい。
食品関係の会社を退職した竹之内がJAの職員になったのは二年前。なにかと佐々良イチゴ農園を気にかけてくれるため、資材の購入やイチゴの出荷などでも相談に乗ってもらっている。
「退院も近いと思います」
「じゃあ、退院したら一緒にお祝いしましょうか」
「……はい?」
親身に相談に乗ってもらってはいても仕事を離れた付き合いはしていないため、いきなり距離を縮められて戸惑う。竹之内は純粋に和夫の退院を祝いたいと言っているのだろうが、菜摘はどう返答したらいいのかわからない。和夫はきっと恐縮してしまうだろう。