政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

冗談にもほどがあるだろう。からかうのはやめてほしい。
三十二歳にして社長の肩書を持つ男が、どこにでもいそうな普通の女である菜摘を欲しいとは何事か。


「キミと結婚したい。恋人はいないそうじゃないか。おじい様もそう言っていた」
「ちょっと待ってください。いきなりそんな話をされても」


あまりにも唐突すぎて話が頭の中に入ってこない。まるで他人事。自分の話をされている感覚がないのだ。
なにしろ理仁は仕事を通して知っているだけの間柄。にもかかわらず突然現れて結婚と言われ、はいわかりましたと答えられるはずはないだろう。


「いきなり? 俺の妄想でなければ、キミには一度プロポーズしたと記憶しているけど」
「ですが、あれは……」


たしかに彼の言うようにプロポーズはされている。でも気持ちがこもっているようには感じられず、菜摘はその場限りの冗談だと思って流した。

そもそも菜摘は、理仁の周りにいそうな華やかな女性たちとはまったく違う生活を送っている。農家の娘で、キラキラした世界には程遠い。そんな女にプロポーズなんて、冗談でなくてなんだと言うのか。
< 7 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop