政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「……旅?」
理仁が眉をひそめる。
「しばらくとはどれくらい?」
「さぁどうでしょう。ちょっと俺にもわかりませんが」
「それは困ったね」
目線を下げ、顎に手を添えて考える素振りをしながら、なぜか理仁は薄っすらと笑みを浮かべている。
(――もしかして変装がバレた!?)
ヒヤッとしたが、理仁なら気づけばすぐに問い詰めるだろうと思いなおす。
「すみませんが、今日はこのままお引き取りください」
頭を下げると、理仁はゆっくりと目線を上げて菜摘をじっと見据えた。
強い視線に、菜摘の警戒心が刺激される。思わずじりっと一歩下がった。
「それじゃ大地くん、キミを代わりに連れていこう」
「……はい!?」