政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
予想外の言葉を聞き、つい素の反応になる。大地の声色ではなく、うっかり菜摘の声で素っ頓狂な声をあげた。
「このままおねえさんが逃げないとも限らない。だからキミは人質」
不意を突かれて理仁に腕を掴まれ、ビクンと肩が弾む。か弱い悲鳴だけはなんとか我慢したが、想定していない展開に思考回路はショート寸前。なにをどうしたらいいのかパニックだ。
「それは困ります!」
「困ってるのは俺の方。今日は菜摘さんを連れて帰る予定で、これまでしっかり準備してきたんだ。これで彼女に逃げられたら、キミたちのおじい様になんて説明すればいい?」
「姉が帰ったら連絡しますからっ」
足を踏ん張るが、所詮は女の力。理仁に引っ張られて玄関から呆気なく引きずり出された。
「そうはいかないよ。帰ってくるかの補償もない。さすがにキミを人質にとられれば、菜摘さんだって逃げたままではいられないだろう」
言い分が真っ向から対立する。