政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「わかりましたから!」
お願いだから手を放してと懇願する。
「人質になります。でも、玄関は開きっぱなしだし手ぶらでなにも持ってないんです」
「それじゃ、五分だけ時間をあげる。ここで待っているから準備しておいで」
上から目線に反発したくなったが、今はそれどころではない。
「たいていのものは揃えてあるから、簡単な着替えくらいで構わないよ」
走り出した菜摘の背中に理仁の声がかけられた。
大急ぎで準備して車へ戻ると、運転手が後部座席のドアを開けた。理仁は仕事か、優雅にタブレットの操作中だ。
押し入れから引っ張り出して荷物を詰め込んだボストンバッグは、運転手がトランクルームへ。大地としての着替えを準備しなければならず思いのほか時間がかかったが、理仁はそれに対して不満を言いはしなかった。
「それじゃ行こうか」