政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

理仁が運転手に指示を出し、車がゆっくりと発進する。

反射的に自宅を振り返った。少しずつ小さくなっていく家を見つめていると、じりじりと不安が大きくなっていく。

(これから私、どうなるんだろう……)

ついていくと決意したものの、明日はもちろん一時間後も想像できなくて心細い。


「心配するな。人質といったって、劣悪な環境に置くわけじゃない。お姉さんが無事に戻ってきたら、キミはちゃんと解放するよ」


〝お姉さんが〟と〝キミ〟という部分をやけに強調する。
ひょっとしたら隣にいるのが菜摘だと気づいているのではないかと言葉の裏を勘繰ったが、そうだとしたら彼が嘘に乗る必要はないだろう。

理仁は意味深な笑みを浮かべて、再びタブレットに目を落とした。


約三十分後、車がライムストーンとロートアイアンの自動ゲートを通過していく。弧を描くスロープを上った先に見えたのは、美術館のように気品のある邸宅だった。
あまりにも立派な外観に窓から目を見張る。口まで半開きになった。
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