政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「じきに連れてくるよ。こちらは菜摘さんの弟の大地くん」
「は、はじめまして、佐々良大地と申します」
「かわいらしい弟さんですね。私は遠山美代子と申します。日高家にお世話になっておりまして、奥様との生活が落ち着くまで、しばらくこちらでお手伝いするよう仰せつかっております」
朗らかな声が耳に心地いい。穏やかそうな人柄が全身から滲み出た女性だ。
「姉の代わりにしばらくお世話になります」
「不自由があったら、なんでもおっしゃってくださいね」
人のよさそうな笑顔を見て、弟のふりをしている罪悪感に苛まれる。でも、今さら後戻りはできない。
優しく微笑んだ美代子は丁寧にお辞儀をして、菜摘たちの前から去った。
「簡単に家の案内をしておこうか」
理仁は「こっち」と菜摘を先導する。
まだ完成したてなのか、どこもかしここも真新しい匂いに満ちている。広い廊下も高い天井も、菜摘の住んでいる昔ながらの日本家屋の造りとはかけ離れていた。