政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

残念そうに笑う美代子に急いで謝る。空になったボストンバッグのファスナーを閉めて、それもクローゼットにしまった。


「理仁様もとても楽しみにされていました」
「……日高さんが?」
「ええ、それはもう」


美代子は手を止め、大きく頷いた。

そんな話を聞かされると、理仁が本気で菜摘を好きなのではないかと勘違いしそうになる。
でも違う。理仁は和夫に頼まれて農園を救おうと考えているだけ。菜摘を手に入れたいと言ったのは、佐々良のイチゴがミレーヌにとって大事な商品だから。ほかに理由はない。


「この家だって――」


美代子がそこまで言いかけたそのとき、ドアがノックされて半開きだった扉から理仁が顔を覗かせる。


「美代子さん、お茶を淹れてもらってもいい?」
「承知いたしました。書斎の方にお持ちしますか? それともリビングにご用意いたしましょうか?」


理仁は菜摘を見てから「リビングにしよう」と答える。
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