政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「大地くんも甘いものは好きなのか」


そう言われてハッとした。本物の大地はスイーツが大の苦手である。イチゴも甘さたっぷりよりは、酸っぱいくらいがおいしいと言うくらいだ。


「あ、そうですね、はい」


別人のふりをするのは本当に心臓に悪い。ハラハラし通しで心が休まるときがないのだから。
とはいえ、そんな事態を招いたのは紛れもなく自分のため文句も言えない。ここまで連れてこられたのは想定外だけれど。


「大地様、紅茶にしたのですが、コーヒーの方がよろしいでしょうか?」
「いえ、紅茶は大好きです」


どちらかと言えば紅茶派だ。


「それはようございました。理仁様もコーヒーより紅茶がお好きなので、イギリスから各種お取り寄せしているんです」
「そうなんですね」


いただきますと言いつつ、ソーサーごとティーカップを手にする。香しい匂いを胸まで吸い込んだ。

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