政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「いい香り」
「定番のアールグレイですが、うっとりするほど芳醇な香りがするかと思います」
美代子の言う通り。イギリスから取り寄せた高級品なのだろう。そう思うだけで贅沢な気分になれるのだから単純だ。
「では、どうぞごゆっくり」
美代子は一礼して、そこから去った。
カップにそっと口をつけ、紅茶を口に含む。シュガーを入れていないため甘さは感じないが、柑橘系の爽やかな香りが鼻から抜けていく。
「おいしい」
自然とそんな感想が口から漏れた。
「大地くん、ミレーヌのイチゴタルトを食べたことは?」
「もちろんあります。うちのイチゴを使っていますから」
「今の時季は輸入物に頼っているけど、佐々良さんのイチゴは一番だと思ってる」
「それはありがとうございます」