政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
セールストークのひとつに過ぎないだろうが、そう言われて悪い気はしない。
「菜摘さんへのアピールってわけじゃなく本心だと思ってもらいたいんだけどね。そうお姉さんに伝えて」
微笑んだ理仁からそそくさと目を逸らす。視線を感じていたたまれず、ぎこちなくイチゴタルトを手に取った。クッキー部分をフォークでうまく割れず、カチャンと思いのほか大きな音を立てて決まりが悪い。
「そうだ。大地くんの連絡先だけでも教えてもらえないか」
「えっ」
そうくるとは思わず驚いて肩がビクンと弾む。甲高い声が出てしまい、咄嗟に口もとを押さえた。
「なにかと必要な場面が出てくるかもしれない」
ここで断ったら理仁はどう思うだろうか。もしも今の〝大地〟を怪しんでいるとしたら、余計に疑うかもしれない。番号を教えられない理由を聞かれても、理仁を納得させられるものは用意できない。
一瞬のうちにいろいろな考えが頭を過る。