政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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気持ちが張り詰めたティータイムを終えて先ほどの部屋に戻った菜摘は、ベッドに腰をかけて大地に電話を入れた。朝からコーヒーショップのアルバイト中だが、そろそろ終わっている頃だろう。
コール三回で彼が出た。予想通りアルバイトを終えて、ちょうど店を出たところだと言う。
「今、日高さんの家にいるの」
『え!? 断るんじゃなかったのか?』
「結婚を断ったら、うちの農園がなくなっちゃうじゃない」
『じゃあ結婚すんのか?』
そう聞かれると答えに困る。
「それを見極めるために来たの。大地に扮して」
『はぁ!? 俺に扮してってなんだよ』
声を荒げて驚く大地に事の顛末を話して聞かせる。
菜摘はしばらく旅に出たことにして、時間稼ぎをしようとしたらしくじったと。大地の格好のまま連れ去られたのは計算外だ。
『……なにやってんだよ』
けなされて当然だろう。