政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

翌日、早速農園に行こうと支度をしていたら、玄関で理仁に呼び止められた。


「大地くん、俺も行く」
「逃げたりしませんから」
「そうは思ってない。ただ俺が一緒に行きたいだけ。もしかしたら菜摘さんが帰っているかもしれないだろう?」


そう言われたら、あからさまに〝ついてこないで〟とは言えない。ここを出るのは息抜きになるかと期待したけれど仕方ないだろう。
日曜日のため理仁は休みだ。

外出するときには運転手付きの車を使うように言われたが、理仁本人の車で行くらしい。彼は真っ白な車体の高級車を大きなガレージから自分で運転して出してきた。助手席のパワーウインドウを下げ、そこに乗るように言う。

菜摘は小声で「お邪魔します」と言って乗り込んだ。
昨夜は美代子の作ったおいしい夕食に舌鼓を打ち、豪華なバスルームで束の間の安らぎを堪能。ただひとつの難点は、お風呂上がりだというのに髪を乾かしたら再びウィッグを被らなくてはならず、さらしも巻かなければならないことだった。

与えられた部屋に戻るまでの間に理仁に鉢合わせする可能性もあるため、いっさい気を抜けない。さすがにベッドに入るときにはウィッグを外したものの、油断できないため熟睡できなかった。
< 94 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop