政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

心地のいいボサノバが邪魔にならない程度に流れる車内。運転に集中する理仁に問いかけた。


「ひとつ聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「日高さん、恋人はいないんですか?」
「恋人? そんな人がいたら菜摘さんにプロポーズしないだろ」


理仁がくすりと笑って答える。
それはもっともではあるが、すぐに鵜呑みにはできない。あのプロポーズはまだ怪しさ満点だからだ。


「でも御曹司だし社長だし容姿だって恵まれているし、ほかにいくらでも女性はいると思うんですけど」


それこそ深窓の令嬢などが。菜摘ではてんで話にならない。


「御曹司か……」


どことなく寂しげに繰り返す。
代々続くミレーヌの跡取りだから御曹司ではないか。


「大地くんは俺たちの結婚に反対?」
「反対というか……、どうして姉なんだろうって疑問で」

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