政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

目の前の信号が赤に変わり、車がゆっくりと停止する。
理仁は菜摘の方に顔を向けた。


「菜摘さんを好きだからって理由じゃ納得いかない?」


答えが直球で返ってきた。変化球でもカーブでもない、ドストレートだ。

まさかそんな返答だとは予測していなかったため、菜摘は目を泳がせて動揺を隠せない。今の自分は大地だと必死に言い聞かせて鼓動を宥めすかせるものの、うまくできずに狼狽える。

菜摘の弟を相手にしているからこその発言だろうし、妙な返答をして、大地が菜摘に告げ口する可能性を考えたからだと自分に必死に言い聞かせた。
理仁が本気でそう言っているとは限らないのに、なにをどぎまぎしているのか。


「ですが、ご両親が納得されないのではないですか?」


なんとか気持ちを立て直し聞き返す。
理仁にふさわしい家柄の女性を迎え入れたいと考えて当然だろう。
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