紅に染まる〜Lies or truth〜
痛心



【田嶋一平】


父:田嶋和臣
母:田嶋麻織


名前を眺めながら
靄がかかる胸の中を掻き毟りたい衝動に駆られていた


兄が3歳の時に不慮の事故で亡くなった両親?


出てきた情報を並べ終えると
モニターの光を見過ぎた目頭を押さえた


「和臣って誰よ!」


苛々する気持ちが足に伝わり過ぎて
貧乏ゆすりが強くなる


兄とは異母兄妹のはずだった


和臣の名前から掘り下げると
父の従兄弟にあたることがわかった

全くの他人じゃないけれど
又従兄弟《またいとこ》なんて
全くの他人レベルに遠い

たまたま父の車を借りた和臣さん夫婦

そこに突っ込んだのは近くの工事現場から盗まれたダンプカー


・・・狙われたのは多分・・・父


父の身代わりになった和臣さんに成り代わって
兄を引き取った父

兄は亡くなった両親の籍のままで
私の兄では無かった

父は母との結婚が初婚で
戸籍は三人しか記載されてない


なんでこんな簡単なことが分からなかったんだろう

身内を調べて来なかったツケが
また大きく私の邪魔をした


「とりあえず」


メイクをして着替えると
これ以上ない証拠を持って出かけた

一階のエントランスへ出ると
バトラーが近づいてきた


「愛様、お出かけなら車を」


一人で外へ出たことのない私が
正面玄関へ向かうのを阻止するように
焦ってついてくる


「すぐ戻るから」


これ以上の干渉を拒絶するように視線を向けると


焦った顔から色が抜けた






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