紅に染まる〜Lies or truth〜



初めて拾ったタクシーに乗って
一人で繁華街へ降り立つ

明かりが灯る直前の繁華街は
既に人で溢れていた

其処彼処に立つ黒服に
ドレスを着たケバい化粧の女達

そんな夜を纏う雰囲気の場所に
白いワンピースを着た高校生の私

この街は異質な私に気づきながらもどこか遠目に見るだけで黙って迎える


それは・・・
既に配置している目と襲名披露での発表があったからに違いない

少しでも龍神会の息がかかる者達は
声を掛けても良い相手を判断する目を持っている

小娘が繁華街を平気で歩けるのは
私を認識したということ

雰囲気に負けないように
背筋を伸ばすと

目当てのビルに入った


カラン、カラン・・・


「いらっ、、愛様!」


いつもと同じ笑顔の杉田を確認すると
カウンターへ腰掛けた


「愛様」


何故か目を潤ませている杉田


「なに?」


「二ノ組襲名、おめでとうございます」
 

「あ〜、あれって目出度いの?」


「えっ!」


驚いたまま固まる杉田に


「コーヒー」


声をかけるとようやく動き始めた


「愛様、今日もお供は下ですか?」


「いや、私一人」


「は??」


コーヒー豆の瓶を持ったまま
再度固まる杉田


「コーヒーの前にここ閉めて」


これまで一人で出掛けたことのない私が
わざわざ出掛けてきたことの重要性を判断した杉田は

静かに頷くと店の入り口に鍵をかけた



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