紅に染まる〜Lies or truth〜
泣き顔が落ち着くのを待って
タクシーを呼んでもらった
車を出すと聞かない翠龍さんに
私のやり方と何度も説明をした
兄の両親が亡くなったことを考えるなら
護衛無しの移動は危険すぎる
本当は田嶋の両親の元へと行くつもりの気分は削ぎ落とされ
ただ・・・
一人になりたかった
。
また繁華街の入り口に降り立つと
母から譲り受けたアンティークの革のバッグから
小刻みに震え続ける携帯を取り出した
【工藤颯】
スッと指をスライドすると
耳に当てた
「愛!どこにいる!!」
「なに焦ってんの?」
「てめぇ!かすり傷一つあったら許さねぇ」
唸るように焦った颯の声を聞きながら
笑いが止まらない
「あんた馬鹿?」
言ってる意味が可笑しすぎて
なんだかホッとした
「一杯飲んだら帰るから」
「あ?俺も行くから場所教えろっ」
「やだ」
「は?」
強制的に終話にした後電源を落とした
「さて、何分かな」
真っ直ぐ見据えた繁華街の先
キラキラ眩いばかりのネオンのアーチを潜った