紅に染まる〜Lies or truth〜
「俺、一平さんのとこで世話になってる」
軽いワンコ風だったのに
この一言で纏う空気を変化させた
「だから?」
やっぱりだ
ここで漸く口を開いた私を
ワンコ風の空気に戻した後で
颯はポカンとしたアホ面を晒し凝視してくる
「あ、え?、いや・・・」
しどろもどろ過ぎて
「プッ・・ククク・・・アハハハハ」
久しぶりに吹き出して笑った
「・・・んだよ」
目尻の涙を指で拭いながら隣の颯を見ると
唇を尖らせてブツブツ文句を言っているのが見えた
「ごめんごめん」
呼吸を整えながら
大声で笑ったことを後悔するように
久しぶりの表情筋エクササイズの後のような引き攣る頬を両手で挟んだ
「で?一平から頼まれたの?」
「あ゛?」
「一平に聞いたから此処に来たんでしょ?」
「あ〜そう」
「一平、なんて?」
「いや、一平さんは何も!ただ」
「ただ?」
「興味が湧いた」
「は?」
どうせ目の行き届かない学校内の護衛かなにかと踏んだのに
『興味』と片付けた
「気付いてないと思うけど‥同じクラスだぜ?俺たち」
「は?」
「ほらな〜そうだと思ってたけど実際聞くと凹むな」
急にシュンと肩を落とした颯は
耳を垂らした犬みたいで可愛い
「で、興味はそのままかしら」
「あ、あぁ」
ゆっくり冷たい空気を肺に取り込むと
「そ、興味あっても教室じゃ話しかけないでね」
声のトーンを低く落として吐き出し
威圧するように視線を絡めて
突き放し
お弁当箱を掴んで屋上を後にした