カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
素顔を知りたいふたりの夜


 見合いの日から三ヶ月後。

 六月上旬のある日、昼休みに職場のビルの屋上でお弁当を広げながらため息をついていた。

 職場である田城不動産は、天沢財閥の傘下である。決してコネ入社などではないが、会社を取り仕切る財閥の一人娘だと履歴書でバレてしまった。

 職場は明るくアットホームな雰囲気でとても働きやすかったし、口利きがあって入ってきたとは思われたくなかったため、仕事にはとても力を入れて真摯に向き合ってきたつもりだ。

 しかし、人間関係もうまくいき、社会人四年目として仕事に慣れて後輩もできた矢先、老舗呉服店に嫁ぐ話がでるとは予想していなかった。

 親の承諾を得て結婚が正式に決まったタイミングで早めに部長には報告してあったが、今後の仕事については話がまとまっていない。

 あの美澄屋に嫁ぐなら、将来の女将として店に入るのべきなのだろう。

 だが、彼の両親も本人も私の意思を尊重してくれるようで、仕事を辞めてほしいとは一度も言ってこなかった。

 一体、この先どうなるんだろう。

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