HoneyとBunny
机が教室の後ろに寄せられ、空いた床をほうきで掃きながら恵里香がため息をついた。

「衣奈さぁ、部活どーする?」

「部活?あ、そうやね。私楽なのにしようかなって思ってる。」

「楽な部活って何ぃ……。」

「部活今年から入らんくてもええらしいよ〜。」

フワフワの髪で背が低い、いかにも可愛い!って感じの女の子だ。
前髪が眉が少し見えるほどの長さで、そのすぐ下には大きくて真ん丸な瞳がパチパチと瞬きをしていた。

「そうなん?」

「保護者からクレーム入ったんやってぇ。お姉ちゃんから聞いた〜。」

「良かったね、恵里香。」

「恵里香ちゃんと衣奈ちゃんやんね。
うち相田 羽美(あいだ うみ)、仲良くしてなぁ。」

「よう名前覚えてんなぁ。」

「二人目立つもん。小竹くんと仲ええから。」


大きめのブレザーの袖からはぴょこんと指先だけ飛び出していて、二人には羽美が小動物みたいに見えた。

「うち友達まだ出来てへんくて……明日から一緒にお昼食べてもええ?」

「ええよ〜。」

羽美は「やったぁ。」と笑うと衣奈にピタリとくっついた。

「友達出来た、めっちゃ嬉しい〜。」

フワフワ髪の羽美ちゃん。
多分クラスで一番可愛い。

衣奈は呑気に思っていたのだが、恵里香はイマイチ腑に落ちない顔をしていた。

「うち、雑巾洗ってくる〜。」と言って羽美が居なくなると意味深な顔をしていた恵里香がようやく口を開いた。

「なんかあの子の名前聞いたことあんだよね。」

「あれだけ可愛いかったら名前も知れるよ。」

「うーん、そうやなぁ。」


恵里香はそう納得したような口ぶりをしながらも表情は曇ったままだった。
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