黒王子の溺愛
所有物
必要な荷物は、こちらで揃えるので、身一つで来てくれれば構わない。
そう言われていて、美桜は差し当たって必要なものだけを、トランクに詰めて、自宅を出た。
両親や千穂さんに見送られ、家の車で彼の自宅に向かう。
車の窓から過ぎる景色を見ながら、美桜は楽しみにしていた。
お見合いではないけれど、お見合いのようなもので。
だから、美桜は黒澤柾樹がどんな人なのか、よく知らない。
けれど、あのパーティでの柔らかい笑顔が、とても、素敵だったから。
「美桜さん、到着しましたよ。」
運転手が車を停めたのは、見上げるようなタワーマンションのエントランスで、黒澤柾樹は、その高層階の一室に住んでいる、とのことだった。
大丈夫ですか?
お部屋までお送りしますか?
と心配する運転手に、
「大丈夫よ。」と笑顔を返して、美桜は、コンシェルジュのいるカウンターに向かう。
「そのまま、お上がりくださいとのことです。」
そう言われて、お迎えはないのね…と思い、美桜は少し首を傾げた。
けれど、お忙しい方と聞いているし、そんなものかも…。
エレベーターを上がり、指定された部屋に向かう。
表札に『黒澤』の文字を見つけ、間違いがないことを確認して、呼び鈴を押した。
『どうぞ。開いているから、中へ。』
「はい…。」
少しずつ、美桜は不安になってきていた。
──なぜ、顔も出してくださらないの?
中に入り、「こっちだ。」と声がするので、スリッパを履いて、リビングに行く。
リビングの、大きなソファに彼は足を組んで座っていた。
美桜が来ているのに、彼は立つ気配もない。
そう言われていて、美桜は差し当たって必要なものだけを、トランクに詰めて、自宅を出た。
両親や千穂さんに見送られ、家の車で彼の自宅に向かう。
車の窓から過ぎる景色を見ながら、美桜は楽しみにしていた。
お見合いではないけれど、お見合いのようなもので。
だから、美桜は黒澤柾樹がどんな人なのか、よく知らない。
けれど、あのパーティでの柔らかい笑顔が、とても、素敵だったから。
「美桜さん、到着しましたよ。」
運転手が車を停めたのは、見上げるようなタワーマンションのエントランスで、黒澤柾樹は、その高層階の一室に住んでいる、とのことだった。
大丈夫ですか?
お部屋までお送りしますか?
と心配する運転手に、
「大丈夫よ。」と笑顔を返して、美桜は、コンシェルジュのいるカウンターに向かう。
「そのまま、お上がりくださいとのことです。」
そう言われて、お迎えはないのね…と思い、美桜は少し首を傾げた。
けれど、お忙しい方と聞いているし、そんなものかも…。
エレベーターを上がり、指定された部屋に向かう。
表札に『黒澤』の文字を見つけ、間違いがないことを確認して、呼び鈴を押した。
『どうぞ。開いているから、中へ。』
「はい…。」
少しずつ、美桜は不安になってきていた。
──なぜ、顔も出してくださらないの?
中に入り、「こっちだ。」と声がするので、スリッパを履いて、リビングに行く。
リビングの、大きなソファに彼は足を組んで座っていた。
美桜が来ているのに、彼は立つ気配もない。