黒王子の溺愛
自宅に帰るのも面倒だから、とその日は婚約発表パーティをしたホテルの部屋を抑えてあった。

「ありがとうございました。」
最後のお客様をお見送りして、柾樹は美桜の頭をそっと撫でた。

「お疲れ様。」
「柾樹さん…。」

美桜は柾樹に頭を撫でられるのが大好きなのだ。
つい、うっとりと見てしまう。

「美桜。」
優しく名前を呼んで、柾樹は美桜の指に自分の指を絡めた。

「早く部屋に行こう。」


部屋に入ると、柔らかく唇が重なった。

愛おしげに、唇に、首筋に、耳元にと、ちゅ…ちゅ、と音を立てながらキスをされる。

「ん…柾樹さん…」
「もう、婚約を発表したんだ。君は俺のものだ。」

もう、そう言われても、今は美桜は悲しくない。

むしろ、嬉しい。
< 50 / 86 >

この作品をシェア

pagetop