黒王子の溺愛

◇美桜ちゃんのお怒り◇

「柾樹さん、ここにお座りくださいっ!」
美桜が、ソファで、自分の横をぺしぺししている。

可愛いんだが…。

なにやら、怒っているらしい。
可愛いが…。

「ん?どうした?」
そう聞いた柾樹は、美桜の横に座ると、美桜を抱き上げて、膝の上に乗せてしまう。

「どうして、乗せるんです?」
「可愛いから。」

美桜は、ふわりと頬を赤くした。
色白の美桜が頬を赤く染めるのは、とても綺麗だ。

きっと嫌われている、と思ったのに、美桜から初恋だの、一目惚れだの…と聞いて、柾樹は更に愛おしくなってしまった。
俺の、美桜。

いつでも、どこでも、笑っていても、困っていても、怒っていても、可愛い。

──本当に、超絶に可愛いんだが。

「ん?どうした、美桜?」
柾樹が美桜の頬を指先でそっと撫でる。

美桜は長くて、綺麗な柾樹のその指で、頬を撫でられるのは、嬉しい。
「柾樹さん…」
美桜は大好きな柾樹の顔をうっとりと、撫でそうになり、ハッとする。

「違いますっ!私は怒っているのです。」
「うん?そうなのか?どうした?」

「私忘れていたのですけれど、柾樹さん、お付き合いされていた方がいらっしゃったんですよね?」

柾樹は少し考えていた。

──突然、何を言い出すのか。

確かにそれっぽい人は、いたにはいたが、あまりに多忙で相手していないうちに、向こうに相手が出来て、別れましょうと言われたのだが。

それに、美桜は忘れているのだろうか。

今でこそ、これほどにまで美桜を甘やかしているけれど、できるならもっと甘やかしたいけれど。
…そうではなくて、最初に会った時は、正直、褒められた態度ではなかった。
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