脆い記憶
数年前まではこの街に住んでいた
高校を中退しこの街を出てからは
この街に来ることもなく
今日、数年ぶりにこの街へきた

この街で青春時代を過ごしたはずなんだから
この街を知ってるはずなのに

わからない

懐かしいはずなのに

わからない

私には所々の記憶がない


この街の高校に通っていた
学校の名前を覚えている

友達がいたことも覚えている
ただ名前や顔がはっきりしない

私の名を呼ぶ友達の声
校舎の匂い
断片的な私の脆い記憶


高校二年生の夏
私は事故に遭った
電車と接触する事故だった

数ヶ月後意識が戻ったときは
親の顔や自分の名前すらわからない状態だったが
数年かけてようやくここまで戻ってきた

なのに
何かが足りない
なんだか毎日がとても虚しい

この街に戻ってこれば何か変わるかもしれない

虚しさの正体だけでも
その影だけでもいいから
何かわかるかもしれないと少しの願いを込めて
この街に戻ってきたのだ
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