HOME〜私と家族〜
「ありがとう」
「いや」

お弁当を渡して、またタクから受け取ろうとしたときに、微かに触れる指先。

「…っ」

思わずバッと離してしまった。
カシャン、と音を立てて落ちるお弁当箱。

「…ご、ごめっ」
「あーあ。せっかく持ってきたのに意味ないな。沙穂はこっち食え」

タクに渡したばかりのお弁当をまた渡されて、タクは落ちた私のお弁当箱を拾う。

「でも、」
「俺は適当に購買で買うから」

立ち上がったタクは、私の顔を見て困ったように笑った。

「悪かったな」
「…っ、」

それが、さっきのことを言っていると分かったから、余計に何も言えなかった。
…私が勝手に、過剰な反応しただけなのに。
タクを困らせてしまった。

「…沙穂。中庭行こう」

呆然とする私の肩を、絵梨がそっと抱く。
自分のことで精一杯で気づかなかったけど、教室はかなりざわついていた。

「う、うん」
「待つつもりだったけど、流石に聞かせてくれる?」

中庭、人気の少ないベンチに座り、絵梨がこっちを見つめる。

「私、おかしいみたい」

ポツポツと、昨日のことから話し始めた。

「なるほどね。それで、沙穂は意識してるんだ?」
「そんなこと…」
「じゃあさっきのはどういうこと?」
「それは」

言葉に詰まる。
そんなの。私だって分からない。
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