HOME〜私と家族〜
時間が早く進めばいいのに、と思う気持ちと、浴衣を買ったり髪型を決めたりネイルしたり、やることが多くて忙殺されていく日々と、心は複雑に綯交ぜなまま、当日を迎えた。
そわそわしすぎて、待ち合わせよりも早く家を出る。

「沙穂ちゃん、どっか行くの?」

玄関で、部活から帰ってきたシンに会った。

「あ、うん。大花火大会に…」
「ああ、有名だもんね。友達も何人か行くって。浴衣、似合ってる」

シンはにっこり笑うと、お腹すいたーとリビングのお姉ちゃんにおやつをねだりに行った。
早すぎるくらいの時間だったけど、歩き慣れてない下駄のおかげで待ち合わせ場所に着いたのは、5分前。

…この5分が心臓に悪い。
タクはどっちから来るのだろう。右?左?後ろ?
視線をあちこちに投げて、今か今かと登場を待つ。

「…なにキョロキョロしてんの?挙動不審」
「な、酷い!」
「お待たせ」

やってきたタクは、私を見て頬を緩めた。

「浴衣、着たんだ?」
「あ、うん…」
「綺麗」
「…ありがと」

タクに言われるとこんなにもドキドキする。

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