HOME〜私と家族〜
それからも、タクはなにかと私の教室に来ては、声をかけてきた。
辞書を貸してくれ、お昼はどこで食べるのか…。
私としては、過激派な先輩たちに狙われるから、極力家以外では関わり合いたくなかったのに、タクはそんなことお構いなし。

ちなみに、シンもたまに来たけど、シンの方は過激派はいないらしく、危ない視線を感じることはなかった。
…その代わりに、見守り隊という、シンを観賞用として愛でてる団体がいるらしいけど。
果たして島本兄弟の何がそんなにいいのか、いまいちわからないまま、私はなんとか2人と関わらない用に過ごすのに必死だった。

「なんでそんなに避けんの」

今日も今日とて、わざわざ寄り道までして電車の時間をずらしたのに、見事に最寄りでタクとかち合ってしまった。

「…別にタクのこと嫌いなわけじゃないよ。ただ、余計な恨みを買いたくないだけ」
「余計な恨み?」

本気でわかってなさそう。
自分がモテることを知らない、無自覚系イケメンはこれだから困る。

「3年生の中に、タクの過激なファンがいるの」
「なにそれ、キモ」
「キモって…。とにかく、女の世界は怖いんだから。タクのうかつな行動で私を危険にさらさないで」
「話しかけるのもダメなのかよ?」
「だからそう言ってるでしょう」

出会って数週間、まだお互いのことを全然知らないけど、もはやそんなの関係ない。
私はタクに対して、かなりフランクに、悪く言えば当たりが強く接していた。

「なにかあるなら家で聞くから」

そう言い残して、抜き去る。
いつまでも並んで歩いているところを見られたら、どこで噂が立つかわかったもんじゃない。

「…チッ」

かすかな舌打ちが後ろから聞こえた気がしたけど、気のせいだと思うことにした。
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