黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 あぁ。俺が麻薬取締官を志したときも、こんなふうに正義感を胸に抱いていたなと懐かしく思う。

 麻薬取締官になったのは、今の俺のように犯罪者に怒りをぶつけるためじゃない。
 薬物に身を落とし苦しむ人を、ひとりでも多く救うためだった。

 佐原と話しているうちに、初心を思い出す。

 大崎さんを亡くしてからずっと怒りと後悔でふさがれていた心の箍がはずれ、肩が軽くなった気がした。
 
 それからずっと、俺は彼女を忘れられなかった。
 
 地道な内偵捜査をしているとき、夜通し張り込みをしているとき、ふいにきらきらと目を輝かせる佐原の顔を思い出した。
 
 そして、彼女はいまごろなにをしているだろう、なんて考える。
 
 麻薬取締官になりたいと言っていたけれど、あんな華奢でかわいらしい女の子が、こんなに危険でつらい仕事を志すとは思えない。
 
< 130 / 219 >

この作品をシェア

pagetop