黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「お前、空手か合気道でもやって体力をつければ?」
「体力ですか?」

 麻薬取締官の研修で逮捕術は教えられたし、一応普段から意識して体を動かしているつもりだけど……。

 目をまたたかせた私に、伊尾さんはうなずく。

「もう少し、体を鍛えた方がいいと思うぞ」
「確かに、自分の身は自分で守れた方がいいですよね」

 呉林くんにさらわれたとき、自分の無力さを思い知った。
 
 そして、体格のいい男ふたりがかりで襲われたのに、あっという間に相手をのしてしまった伊尾さんの隙のない身のこなしを思い出す。
 
 さすがにあそこまではなれないとしても、もう少し体を鍛えてもいいかもしれない。
 
 私が真剣な表情でうなずくと、伊尾さんは「いや、そうじゃなくて」と首を横に振る。

「え?」

 首をかしげた私に顔をよせ、耳もとで囁く。

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