ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
「くくっ、その間抜け面、その顔もわりかしいいな」

頬を緩めて甘い顔を向けている迫田さんに分かりやすく私の顔は赤くなる。

いつのまにか警備室の前まで歩いて来ていた私たちの顔を交合に見た守衛さんは、目を丸くして

「お疲れ様…小谷さん!?
えっ…えっと…その…迫田さんと知り合い?
…っていうか…」

守衛さんの視線が繋がれた手をじっと見つめてくしゃっと目尻を下げて微笑んだ。

「なんだなんだ。
小谷さんにもちゃんと好い人いるんじゃないか。
泰造さんが心配して誰かいい人いたら紹介してくれなんて言われてたけど余計なお世話だな。迫田さんが相手なら万々歳だ」

「えっ!あっ…その…」

口ごもって目が泳ぐ私の手を迫田さんはぎゅうっと力をこめて握りなおすと

「恥ずかしがってなかなか彼女が僕との仲をオープンにしてくれなくてね」

と頬をかいて同意を求めるように拗ねた顔をした迫田さんが私の顔を覗きこむ。

「はは、そりゃこんな色男と付き合ってたら公にしたら回りの女性陣から妬まれて大変だもんな小谷さん」

迫田さんのそんな顔を見せられて、繋がれた手から伝わる体温と、ふれ合う体の右側が熱をもち演技なんてできやしない。

話しかけてくる守衛さんに返事なんてできなくて、俯いて火照る顔を見られないようにするだけで精一杯だ。

そんな私に変わり、にこにこした迫田さんが言葉を返す。

「いや、そろそろオープンにしておかないと泰造さんにもそうやって心配かけちゃうし、僕も彼女が誰かに拐われるんじゃないかときがきじゃなくてね」

「はは、小谷さん可愛いからねぇ。専門店街の若旦那たちが声をかけたくて隙を狙ってるみたいだけどあんなこといいながら泰造さんががっちりガードしてるからみんな小谷さんには近寄れないんだよね」

守衛さんの言葉に迫田さんが眉を潜めてにこやかだった表情が一瞬で険しくなる。

「だめですよ!
朋葉は俺の彼女ですから。
言い寄ろうとしている奴等に釘指しておいてくださいね。
誰にも渡す気はありませんから」

これは迫田さんの本心なんかじゃない…。

私は彼に雇われたお見合いを破談にするための今日1日の恋人。

頭ではわかっているのに私の胸は痛いほど締め付けられて、彼の言葉に、彼の表情に、忙しなく高鳴っていた。
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