ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
'「朋葉っ!」

すぐに追いかけてきた迫田さんが私に追いつくのはすぐだった。
コンパスが…足の長さが違いすぎる…。

「逃げるな朋葉!もう俺の前から2度といなくなるな!」

「きゃあ!」

背後から伸ばされた手が腕を掴み、私を無理矢理立ち止まらせるとそのまま抱きしめた背後の迫田さんは肩で息をし、私も同じように息を切らせてそのままこの状況に固まった。

「頼むから逃げないでくれ朋葉。
俺の話を聞いてくれ。うん、ていうまで離さないからな」

切羽詰まった声で耳元でささやかれ、背後からぎゅうっと抱きしめる腕にさらに力を込めた迫田さんの髪が頬に触れる。

私の肩に顔を埋めて、まるで子供のようにしがみつく迫田さんは微かに震えていて泣いているのではないかと心配になる。

大の大人がこんなことで泣くはずなんてないのだけれど、一度引き受けたことを一方的に断り逃げ出したことに申し訳なさで胸が痛む。

肩に乗った頭に手を伸ばして、そっと柔らかな頬に触れた髪に指を通す。

「ごめんなさい…逃げないから。
ちゃんと話を聞くから離してください…」

「絶対逃げない…か…?」


「は、い…!?」

髪に触れていた手を掴んだ迫田さんは、泣いているはずなどもちろんなくて、口角を上げてにゃりと笑うと私のことを肩に担ぎ上げて

「せっかく一緒にゆっくり朝飯食おうと思ってたが予定変更だ。
逃げられない場所で話を聞いてもらうからな」


「えっ?ちょっ、下ろして!!
やだっ、いやあぁぁぁ」

あぁ、なんて私はこんな奴に情けをかけてしまったのだろう!

嫌と言えなかったことを後悔して暴れる私に

「そんなに暴れると尻触るぞ」

「ひっっ!きゃあぁぁぁ!!!」

お尻を触る手の感触に悲鳴を上げて、私はさらに手足をバタつかせ、愉快に笑う迫田さんの声が早朝の静かなベリーヒルズの街に響いていた。
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