ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
「あのっ!」

繋がれた手を振りほどいて迫田さんを見上げると

「ダメだぞ。
これは朋葉にしかできない仕事だからな」

と私の言葉を遮った。

「最初に言っただろ?
これはお前にしか頼めない仕事だと。
いいか、俺のまわりにいる女になんて頼んでみろ。
勘違いされて、弱味につけこまれてそのまま結婚、なんてことになったらどうするんだよ。
この見合いを破談にする意味がない」

「えぇっと…でも別にどうしても私じゃなきゃダメではないかと思うんですけど…。
むしろ私では迫田さんのご両親も納得できないんじゃないですか?」

そうだ。

確か今日屋上庭園で予定されているお見合いは、迫田リゾートの御曹司とここベリーヒルズビレッジと呼ばれているショッピングモールや病院、高層オフィスビルや高級マンション、お金持ちの人たちが集まるこの街を所有している旧財閥のお嬢様がお相手なはずだ。

そんな政略結婚を破談にできるほどのお金も身分も容姿さえも私は持ち合わせてはいない。

迫田さんに庭園の仕事でクレームをつけるって脅されたけど、旧財閥のお嬢様を敵に回す方が私の仕事なくなるんじゃ…。

さぁっと血の気がひき体がカタカタと震えだす。

「そもそも私は両親もいないただの庭師で美人でもないただの一般庶民なんです。

迫田さんの今日のお相手ってベリーヒルズの所有者のお嬢様ですよね?

私、こんなことして嘘ついて破談にしたらそれこそ仕事クビじゃないですか!!

この話はなかったことにしてください!」

迫田さんの顔が苦痛に歪んだのが視界に入ったが、ズキンと痛んだ胸を押さえて私はその場から逃げだした。
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