ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
「あー、美味しかった。
ご馳走様でした迫田さん。
でも…せっかくこんなに買ってきてくださったのに全部は食べられそうもないです。
ごめんなさい」

申し訳なくてしょげる私に

「あぁ、かまわないよ。後で相楽(さがら)が来るからアイツに食わせるから大丈夫だ」

迫田さんは手にしていたコーヒーと新聞をテーブルの隅に置くと、残された食べ物を袋につめこみはじめたのですぐに私も手伝った。

相楽さん…?
一体誰がくるのだろう…。

まるで私の心を読むように迫田さんがすぐに答えた。

「相楽は俺の秘書をしている男だ。今日の恋人のふりをしてもらう件で契約書を持ってくる」

「契約…書…?」

私の手の動きがすぐに止まる。

「あぁそうだ。秘書立ち会いで俺の恋人役の契約を交わす。
俺なんかとの口約束よりその方が安心できるだろ?」

契約書…迫田さんの事務的な言葉に胸の奥がチクリと痛んだ。

わかってる、これは仕事なのだ。

切羽詰まった迫田さんが、たまたま見かけた私に、日常で接点なんて持たない私だからこそ頼んできた仕事なのだ。
だけど…。
気がつけばソファーから立ち上がった私は叫んでいた。

「そんなの、契約書なんてそんなものいりません!

私は困っている迫田さんを助けます!

私で役に立てるなら力になります。
お金持ちのお家事情は私にはわからないけど、迫田さんは政略結婚なんてしたくないんでしょ?

私の両親も駆け落ち結婚なんです。だから…迫田さんだって結婚は好きな人としたいですよね。

えぇ、いいですよ。

やります!

迫田さんの恋人やりますから私!

任せて下さい!」

胸を叩いて鼻息荒く一気に捲し立てた私を、ぽかんとした顔で眺めていた迫田さんは、数回瞬きするとにっと笑い私に右手を差し出した。

「これは随分と頼もしいな。
あぁ頼むよ。俺を助けてくれ。
だったら俺たちは今から恋人だ。
俺は大知、今からは名前で呼んでくれ。宜しくな朋葉」

「はいっ!わかりました。微力ながら精一杯やらせていただきます。大知さんっ宜しくお願いします!」

出された右手を私もすぐにつかみ握手を交わす。

そして私は彼の一時的な恋人になることになった。
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