ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
翌日、麻酔から目が冷めたおじいちゃんは、私の顔を見ると眉毛を下げ

「俺のことなんて気にしないでハワイに行けば良かっただろう」

と、自分のせいで旅行が取りやめになったことで項垂れて何度も私に謝った。

「もう!いいってば!やめてよおじいちゃん!
私は大知さんも大事だけど一番はおじいちゃんなの!
それに、おじいちゃんの受けてた仕事、私にしかできないでしょ!」

「あぁ…そのことなんだが…」


さらに申し訳なさそうにおじいちゃんは項垂れて、私はぎっちりつまったおじいちゃんのスケジュールを知りぎょっとした。内心悲鳴を上げながら、先方に連絡をして事情を説明し、私がおじいちゃんの代りでかまわないかを確認してそのまますべての仕事を請け負うことがすんなりと確定した。


だけど…。

翌日から目が回る忙しさがはじまった。

おじいちゃんの足元にも及ばない私の作業は、手際も悪く時間がかかった。

表向きは新婚家庭なはずなのに、内情は大知さんが提案したとおりに朝一緒にコーヒーを飲むこともできずに、私は彼が起きる前に家をでなければいけなかった。

夜も大知さんは深夜に帰宅し、せめてひと声かけたくて待っていても、くたくたな私はいつの間にか眠りに落ちていてかれこれ2週間声を聞くどころか顔さえ合わせてもいないのだ。

「いくらなんでもひどすぎる!」

眠い目を擦りながら

「部屋にいるから寝ちゃうんだよね。うん、今日はここで待とう!」

リビングのソファーで見たくもないテレビを見つめ、それでも次第にテレビの音がだんだん遠くの方から聞こえてくる…。

あぁ、だめ…眠い…。

寝ちゃだめ…今日こそは…頑張って出迎えなくっちゃ…。

私は仮の妻だけど一緒に住む間は少しでも彼の妻らしいこと…ううん、彼の認識がただの同居人でもかまわない。

限られた二人の時間を大切にして過ごしたい。

近い未来が他人になるのだとしても、幸せな記憶を残しておきたい…。
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