ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
「ぶはっ、くくっ。
悪い、いや、笑ってることもその…さっきのことも。
いろいろすまない。

俺、酔ってる時と寝ぼけてる時、結構いろいろやらかすらしいんだよな。
相楽に釘刺されてる。とくに酔った時は女をそばにおくなって。

まぁだから、夜はほんとに俺を待たないで部屋に鍵かけて先に寝ちゃってくれ。
接待で飲むことが多いから近寄ると俺もいくら契約結婚でも何もしない保証がない」

繋いでいた手を急に離し、立ち上がって背を向けた大知さんに寂しさがこみ上げる。

一瞬少し近づいた距離が、また一気に突き放された。

彼が口にした "契約結婚" という言葉に、鋭い棘が胸に突き刺さったように痛くて痛くて仕方がない。

あぁ、駄目だ。

私この人が好きなんだ。

どうしよう…。


気がついてしまった気持ちに、もう目を逸らすことができない。

私を…頑張ってすきになってもらう…?

ううん、それは絶対にない。

彼が私を恋人役に選んだのも、妻のふりをしてほしいと頼んできたのも、ほとぼりが冷めたらお互いにすんなり他人に戻れるからだ。

そう、私達は結婚式は挙げたが、戸籍上は他人なのだ。

記入した婚姻届は提出はしていないのだ。

このことは、相楽さんにも知られていない私と大知さんの結婚の取り決めなのだ。

重い空気に包まれ、お互いに無言になってしまった待合室のドアがノックされた。

「三井さんの手術無事に終わりましたよ」

目を合わせた私達は…お互いに安堵のため息をつき、麻酔で眠るおじいちゃんの顔を見てから帰宅した頃には陽が少しずつ登り始めていた。
< 60 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop