君は私の唯一の光
「男の子?同室に?」



朝起きて、体を拭きに来てくれた由奈さんからの話に、ついていけなかった。




「そうなの。サッカーの試合で怪我をしたって、今連絡があって、多分骨折なんだけど、もし入院ってなったら、ここの部屋しか、今空いてないの。でないと、おじいちゃんおばあちゃんだらけの部屋に入ることになっちゃってて。」





なるほど。確かに、サッカーをするほど元気な男の子が、お年寄りだらけの部屋に入ったら、温度差の激しい大変な病室になりそう。




仕方ない……かな?




まあ、もしもの話だし。サッカーの怪我で、そんなになるとも思えない……分かんないけど。





「わかりました。でも、私もその男の子と仲良くとか、できないと思いますよ。」




「大丈夫!ひどい骨折でも、1ヶ月もかからないから!」




「ふふっ、大丈夫ですよ。私は。」




「じゃあ、もし入って来たら、ベットは前でもいい?」




「はい。」





由奈さんは、私と違って、毎日生き生きしてる。笑顔を絶やさず、こっちまで笑わせてくれる天才。そんな彼女が、とてつもなく羨ましい。




朝食を食べ終わって、小説を読んでいると、外が少し騒がしくなった。そして、いろんな人の話し声が聞こえた。





「ほんとに来るの?」





思わず呟いてしまった。まもなく、病室の扉が開いて、由奈さん含め4人の看護師さんと、見知らぬ男の子と女性が入ってきた。




男の子は、ベットに寝転がって、運ばれている。足は、包帯グルグル巻き。




本当に、入ることになったんだ。私なんかが同室って、かわいそう。





「乃々ちゃん、朝言ってた子、入院になったから、よろしくね。名前は、神山(かみやま)洸夜(こうや)くん。今は、ちょっと寝ちゃってるけど。」




「はい…。」





これからが、心配で(たま)らない。





桑野(くわの)乃々花(ののか)さん、ですよね?」




「あ、はい。」






突然、神山くんのお母さんだと思われる人に声を掛けられた。





「私、神山葉月(はづき)です。今日から、30日間息子の洸夜がお世話になります。」




「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」




「すみません。先ほど検査が終わって、包帯を巻いていただいている間に眠ってしまって。」




「あぁ、そうなんですね。」





すごいな、この人。骨折して、その後すぐ寝るって。





「私、これから所用がありまして、今から帰るんですけど、息子の事、どうかよろしくお願いします。」




「あ、はい。特に出来ることはありませんが、今日からお世話になります。」





お母さんは、いい人そう。神山くんは、どうか分からないけど。





そう言って、そそくさと帰っていったお母さん。由奈さんも、神山くんが起きたらナースコールする様に私に言ったら、さっさと出ていってしまった。




「はぁ、30日間か。」




ま、それまで仲良くするのも無理だろうし。向こうも私と関わるのなんか、嫌になるだろうし。たった1ヶ月の辛抱(しんぼう)だ。頑張ろ。




そうして私は、読書を再開した。


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