君は私の唯一の光

君の笑顔を守りたい said 洸夜

「きゃーー!なんかいる!足にいる!!」




ただ今、お化け屋敷の中にいる俺ら。乃々花は、どうやらお化けが苦手だったみたいだ。





さっきからずっと、奇声を上げている。ほんと、困ったお嬢様だよ。俺の腕にしがみついて、一切離れないし。





俺としては、いいけどさ。





実は今日は、乃々花の16歳の誕生日だ。翔さんから聞いたんだけど。本人は、忘れているようだ。



文化祭が、よほど楽しみらしい。



毎年、3つのクラスによって劇が行われる。学年関係なく、クジで選ばれる。そして、今年は俺らのクラスが当たった。いいのか悪いのか、よくわかんないけど。



そして、なぜか俺が王子役に選ばれた。嫌だったけど、言える雰囲気ではなくて。仕方なく、引き受けたんだ。それに加えて、相手役の白雪姫を宮本がやると言い出し、悩んだ。




……個人的に、宮本は嫌いなんだ。失礼だけど。なんでも、ズカズカと踏み込んでくるから。乃々花と付き合ったって言った時も、執拗に乃々花について聞いてきたし。乃々花がどこの病院にいるのか、何号室に入っているのか聞いてきた時は、ありえないと思った。



それから、より嫌いになってしまったんだ。俺の見舞いに来てくれた部員全員に口止めをし、なんとか宮本にバレるのは防いだ。



本当に、あいつはいい噂を聞かないから、乃々花に関わるのを阻止できて安心した。





そんなこともあり、本当に2学期は大変だった。星流学園は、文化祭とかの行事に力を入れているから、約1ヵ月半前から準備が始まる。劇をするクラスは、もっと前からだ。セリフ覚えや衣装・道具作りに邁進するから。







そんな慌ただしい日々も、今日で終わりだ。




ここ1週間は、なかなか乃々花と過ごす時間が取れなかった。家に1人でいる乃々花は、相当寂しかっただろうに。ごめんな。






せっかくの初めて一緒に過ごせる乃々花の誕生日。一生の思い出になるよう頑張った。友達や知り合いに協力を頼みまくり、プレゼントを用意した。だから、松原や竹島が言ってた“予約”をしてもらったんだ。そして、今いるお化け屋敷もサッカー部の先輩に頼み、すぐに入れてもらえるようにした。……サッカー部の部員が多くて、本当に良かった。



サプライズとか、向いてないのはわかってるんだけど、頑張っている。




以前、友達の誕生日のサプライズパーティーを計画していたが、俺のせいでバレたんだ。本人のいる前で、パーティーの相談をしたから。おかげで、大失敗した。



……今は、ちょっと複雑な気分なんだ。乃々花に早くプレゼントを渡して喜んで欲しいっていう思いと、喜んでくれるかっていう不安。入り混ざって、穏やかじゃない。




腕にしがみつき、ちょこちょことしか進めない乃々花に、笑みが溢れる。俺はホラーとか平気なんだけど。遊園地とかのもっとリアルなお化け屋敷に入ったら、乃々花やばいだろうなっていう悪戯心が出る。




「乃々花、大丈夫か?」




「…………」




ブンブンと首を横に振る乃々花。かわいすぎるだろ。




「ちゃんと掴まれよ。」




「え?………きゃっ!」




俺が言った言葉の意味がわからなかったのか、疑問の声がこぼれたが、それは無視して、乃々花を抱き上げた。いわゆる、お姫様だっこ。



乃々花、軽すぎ……。陽菜と同じくらいな気がする。小学1年と一緒って、さすがに言いすぎか?




「こ、洸夜?」




「このまま連れてくから、目も閉じとけよ。」



「う、うん……」




怖さのせいか、俺の首筋に顔を埋める乃々花。はぁ……素直でかわいいけど、本当に男に襲われないか心配。



同じ学校に入ってくれないと困る。少しでも長い時間、一緒にいたいっていうのもあるが、なによりも他の男に迫られないか不安だ。学年が違うっていうだけでも、まあまあ厄介だし。




「洸夜、もう出口に着く?」



「もうちょっと。着いたら言うから。」




「うん……」








しがみつく乃々花に、愛おしさが込み上げる。






乃々花、後夜祭まで待ってろよ。
< 83 / 97 >

この作品をシェア

pagetop