私は森の支配人
────森に入っていく


静かな所。鳥一匹鳴いていない。ただただ、自分の足音だけが聞こえてくる。


鬱蒼と生い茂る木々は、不気味な色を放っていた。普通の木に見えるけど………なにかが普通じゃない。



………まあ、どうでもいいか。








───────「ここでいっかな」


今まで見てきた中で、一番大きな大木の前で足を止めた。不思議と魅力的なそれは、優しく風に揺れていた。


縄をかける。切れないように、一番強そうな物を買ってきた。まさかあの店員さんも、こんな目的のためにこれを買ったとは思わないだろう。


出来た輪っかに首をかける。持ってきた簡易的な台は、これから起こる事が分かるかのように、悲しく軋みをあげた。


ゆっくりと、台を倒す。






────確かに苦しい。でもそれ以上に………嬉しかった。



目を閉じて浮かんでくるのは、最悪な思い出ばかり。暖かい思い出が走馬灯の中で出てくることは、たったの1度もなかった。






───────ふぅ。…………もし、もし生まれ代わりという物があるのなら………私はもう、こんな思いはしたくない。


ゆっくりと、まったりと生きたい。鍛えられたこの目で人を見て、きちんと判断したい。




──────あぁ。でも1番は…………【恋】と言うものを……知ってみたい……かも。



薄れ行く意識の中で、不意に出てきた乙女のような思想に、彼女は思わず笑ってしまった。
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