ズルくてもいいから抱きしめて。
居酒屋を出て、私たちはタクシーへ乗り込んだ。

今日はお酒も飲んだし、タクシーの揺れが心地良くてなんだか眠たくなってきたな、、、

それに気付いた天城さんは、私の頭をそっと自分の肩に乗せてくれた。

天城さん、良い匂いだな〜
清潔感のある爽やかな香り、、、柔軟剤の香りかな?

天城さんの匂い好きだな、、、

眠ってしまいそうなフワフワした頭で、私はそんなことを考えていた。



「神崎、着いたぞ。」

「お〜い!」

「か・ん・ざ・き!」

「起きろ〜!」

「おい!」

ペシっ!!

「いてっ!!えっ!?はっ!!はい!!」

天城さんにおでこを叩かれ、一気に目が覚めた。

いつの間にか寝ちゃってたんだ。

「ほら、行くぞ!」

そう言って、天城さんは私の手を引いてタクシーを降りた。

私の部屋の前に着くと、天城さんは掴んでいた私の手を離した。

そして、私の頭を優しく撫で始めた。

あっ、、、キスするんだ。

天城さんとのお付き合いを始めてから、私たちの関係は少しずつステップアップしていた。

歩く時は、自然と手を繋いだり腕を組んだりすることが当たり前になった。

そして、キスも、、、

天城さんが私の頭を優しく撫で始めると、これからキスをする合図だった。

頭を撫でていた手を頬に滑らせると、チュッと軽く触れるだけのキスをした。

「じゃあ、おやすみ」

そう言って、天城さんは帰って行った。

今日もそのまま帰っちゃうんだ。

私は内心ちょっと残念に感じていた。

天城さんとお付き合いを始めてしばらく経つけれど、まだキス以上の関係にはなっていない。

もう心の準備はできているのに。

私、そんなに魅力ないのかな、、、?
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