ズルくてもいいから抱きしめて。
あれから、私と天城さんのお付き合いが始まった。

天城さんのことをどれほど好きなのかは、本当のところまだよく分からない。
こんな不確かな気持ちのままお付き合いを始めるのはズルいかもしれないけれど、天城さんは一緒に前に進もうと言ってくれた。

その言葉を私は信じたいと思った。



「はぁ〜〜〜疲れた〜!!」

先ほどまでパソコンと睨めっこをしていた天城さんが、大きく伸びをした。
そして、おもむろにスマホを取り出して何かを打ち始めた。

〜♪〜♪〜♪〜

私のスマホに天城さんからメッセージが届いた。

『飯、何食いたい?』

お付き合いを始めてからも、金曜日に天城さんと飲みに行くことが当たり前になっていた。

変わったことと言えば、こうして毎回私の希望を聞いてくれるようになった。

『いつもの居酒屋で良いですよ♪』

私は返事を打った。



「なぁ、いつもこの店だけど良かったのか?」

居酒屋のカウンター席に座る天城さんが、隣に座る私の方を見て尋ねた。

「えっ?何がですか?前からこのお店でしょ?」

「まぁお前が良いならそれで良いんだけど、、、『もっとお洒落なお店でデートしたい』とか思わないのか?」

「まぁ、デートっぽくはないですよね。あれ?もしかしてそれ気にして毎回私の希望聞いてくれてたんですか?天城さんなんか急に優しくないですか?」

「彼女になったんだから、今までと同じなわけないだろ?今までは『後輩』、今は『彼女』、優しくなるのは当たり前だろ?お前のこと大事にしたいと思ってるんだよ。」

えっ、、、この人こういうことサラッと言っちゃう人だっけ?

どうしよう嬉しい、、、。

「あっ、あの天城さん、、、私、嬉しいやら恥ずかしいやらでどんな顔をしたら良いのか分からないです!」

「お前は俺の彼女なんだから、堂々と優しくされてろよ。」

天城さんはそう言って、私の頭を優しく撫でた。
< 9 / 101 >

この作品をシェア

pagetop