ズルくてもいいから抱きしめて。
飲み会開始から、そろそろ2時間が経とうとしていた。

相変わらず神崎の隣には、あの男がベッタリだったが、特に進展はないらしい。

見ているこっちが可哀想に感じるぐらい、神崎は一環として断っていた。

あの男は多少強引ではあるが、イケメンで背も高く、大抵の女なら誘いに乗りそうなものだが、、、

ふと気になって神崎の方へ目をやると、神崎の目がトロンとなって眠たそうにしていた。

その表情や仕草はどこか色気が感じられて、神崎のことが少し女に見えた気がした。

そんな顔見せたら、隣のやつ余計に諦めねーだろ。

しゃーない、連れて帰るか。

俺は立ち上がり、神崎と男の間に割って入った。

「はい、終了!2時間口説いて無理なら諦めな。こいつ眠たそうなんで連れて帰るわ!中村、あと頼むな!」

中村は、ニヤニヤしながら片手を上げて『了解』と返事をした。

「えっ!?ちょっ、待って!ちょっと、、、」

男は慌てていたが、気にせず神崎の腕を掴んでそのまま店を出た。

「天城さん、、、あのまま、、、帰っても、、、大丈夫、、、なんですか?」

「大丈夫、大丈夫!同期の中村に任せてきたしな!」

神崎は、今にも眠ってしまいそうに頷いた。
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