ズルくてもいいから抱きしめて。
眠ってしまった神崎に布団を着せてやり、俺は帰ることにした。

とりあえずメモ残しとくか。

『酔っ払いの神崎へ。　鍵はポストに入れて帰る。今度、飯奢るように！　天城」

これを読んだ時の神崎の慌てようが手に取るように分かり、少しおかしくなった。

「じゃあ、俺帰るからな〜」

眠る神崎に声を掛けて帰ろうとすると、ボソッと声が聞こえた。

「、、、いかないで、、、」

えっ！？

驚いて神崎に近寄ると、神崎は眠ったままだったが、その表情はとても悲しそうだった。

「、、、いかないで、、、しんじ、、、」

しんじ、、、前の男か？

辛い失恋でもしたのだろうか？

こいつもいい大人なんだから、過去に男がいてもおかしくはない。

ただ、、、なんとなくモヤモヤするのは気のせいだろうか？

しばらくその場から離れられずにいると、神崎の目からスーッと涙が流れた。

その瞬間、俺の中で何かのスイッチが入った気がした。

「俺がそばに居てやる。そんな悲しい恋、俺が忘れさせてやるから、、、」

俺はそっと囁き、神崎の涙の跡にキスを落とした。
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