ズルくてもいいから抱きしめて。
「はぁ〜遂に来てしまった、、、どうしよう、、、緊張してドキドキする、、、」

「おい!今からそんなんでどうするんだよ。それに、本人がここに来るかはまだ分からないんだろ?」

「そうなんだけど、、、何となく来る気しない?わざわざ個展するぐらいだし、お客さんの反応とか見たいと思う。」

おそらく“shin”は表に出られない理由があるのだろう。

ただ、表現者として賞を取ったり個展をしたり、世の中に発信したいと思っているはず。

それなら、アプローチ次第では写真集の話にも乗ってくれるはずだ。

「おっ、完全に仕事モードの顔になったな。その調子で行きますか!」

「はい!」

私たちは、個展会場へと足を踏み入れた。



個展会場の規模としては、かなり小さい方だった。

“shin”であれば、もっと大きい会場でもお客さんは殺到しただろう。

どうやら、無名の写真家として名前はシークレットのまま小規模で個展を開いたようだった。

ただ、写真を見てすぐに分かった。

これは正真正銘“shin”の写真だ。

見慣れた空の青さであっても、“shin”の写真はどこか見る者を惹きつける力があった。

何だか懐かしいような、ホッとするような、不思議な気持ちになった。
< 24 / 101 >

この作品をシェア

pagetop