ズルくてもいいから抱きしめて。
「ねぇ、樹さん。私も樹さんの御両親に会いたいんだけど、、、やっぱり電話だけだと私も気になっちゃって。」

樹さんの実家は日帰りでは無理な距離なので、まとまった休みがないと会いに行けなかった。

樹さんが私の両親に挨拶してくれたように、私もきちんと御挨拶しておきたいな。

「そうだよな。俺も、姫乃のことちゃんと親に紹介したい。ただ、2人同時に休み取るとなると、、、会社のやつらに俺たちの関係をきちんと話さないといけないよな。」

「そっか。先ずそこからだよね、、、」

今まで憎まれ口も叩ける仲の良い先輩後輩で通ってたし、今更“付き合ってます”、“同棲してます”って聞かされたら、みんなどう感じるだろう？

特に樹さんは社内でも人気があって、密かに憧れてる女性社員も多い。

橋田さんのような“美人で仕事ができる女性がお似合い”と噂されていたのも聞いたことがある。

それなのに、相手が私のような女でみんなはどう感じるだろうか？

2人の関係を知られることで、仕事がやり辛くはならないだろうか？

「とりあえず休みの件は、俺から部長に相談しとくわ。他のやつらは、タイミングみて追々話していこうか。まぁ、俺は今すぐにでも言い回って男が寄ってこないようにしておきたいけどな。」

樹さんは私の悩みを感じ取ったのか、わざと悪戯に笑ってみせた。
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