ズルくてもいいから抱きしめて。
「そういえば、俺の実家へ行くための休み取れそうだぞ。」

樹さんが言っている休みとは、先日部長に頼んでいた“実家へ挨拶に行くための休み”のことだ。

結婚の挨拶ではないけれど、将来を見据えての同棲のため御両親への挨拶はきちんと済ませておきたかった。

「休み取れるんだ!良かった〜」

同じ部署で2人同時に休ませてもらう事に少し気が引けていたので、部長からOKが出たことに私は安堵した。

「休みって言っても、1週間の出張に行くのが条件なんだ。」

「出張?」

「あぁ。本当は部長が行く予定だったんだけど、ちょうど俺の実家が近いから“そのまま挨拶行ってこい”ってさ。そういうことだから、姫乃は後からこっち来て合流して。」

「なるほど。確かにそっちの方が効率良いね。私は出張最終日の夜に、そっちに行けるよう仕事の調整するね。」

樹さんが長期出張で家を空けるのって、かなり珍しいかもしれない。

同棲を始めてから、家でも職場でもずっと一緒だったのに、1週間もこの部屋でひとりなんだ。

一緒にいる時間が長過ぎて、たった1週間会えないだけで“寂しい”と感じてしまう。

私は、いつからこんなにも寂しがり屋になったのだろう。

「姫乃、、、寂しい?」

「えっ、、、もしかして顔に出てた?」

「あぁ。捨てられた子犬みたいに“シュン”ってなってる。」

そう言って、樹さんはククッと笑っていたけれど、樹さん本人も少し寂しそうな顔をしていた。

樹さんも、私と同じように感じてくれていたら良いな、、、。
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