ズルくてもいいから抱きしめて。
部長に呼ばれたその後のことは、、、よく覚えていない。

目の前に靄が掛かり、周囲の雑音も遠くから聞こえ、自分が自分で無くなったかのような、まるで体が宙に浮いているかのような、現実味のないふわふわとした感覚だった。

「詳しいことはまだ分からないが、天城が向こうで事故に遭ったらしい。」

部長のこの言葉が、私の頭の中を何度も何度も響き渡っていた。

樹さんの元へ行かなきゃ、、、

どうしよう、、、

どうしよう、、、

どうしよう、、、

「、、、」

「、、、」

「神崎さん!大丈夫!?」

突然誰かに肩を叩かれた。

私はハッとして意識をハッキリとさせると、そこに居たのは同僚たちだった。

「行って来なよ!」

「えっ?」

「天城さんのところに行って!」

「えっ、でも、、、」

天城さんが不在の今、急に私まで抜けてしまえば、みんなへの皺寄せが行ってしまう。

今すぐ飛んでいきたい!

でも、、、

「神崎さん、迷惑とか考えないでね!」

「えっ?」

「私ら、この前の噂の件で神崎さんに嫌な思いさせたでしょ?罪滅ぼしになんてならないけれど、こういう時ぐらい協力させて欲しい。」

「そうだよ、神崎さん!俺らも天城さんの状態が心配だし、神崎さんが代表で行ってきてよ!」

みんな、、、ありがとう。

部署のみんなに後押ししてもらい、私は急遽仕事を切り上げて樹さんの元へ向かった。
< 90 / 101 >

この作品をシェア

pagetop