ズルくてもいいから抱きしめて。
待たされてどれぐらい経っただろう?

あとどれだけ待てば樹さんに会えるの?

受付で待たされてしばらく経った頃、誰かに呼ばれた気がした。

辺りを見渡すと、一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。

「あの、、、もしかして姫乃さん?」

「えっ?、、、はい。」

「息子がお世話になってます。樹の母です。」

「えっ、あっ、樹さんのお母様ですか!?すみません、ちょっと驚いてしまって。」

「こんな所まで来させてごめんなさいね。受付の方から連絡もらって、樹の代わりに迎えに来たのよ。」

初めてお会いする樹さんのお母さんはとても物腰の柔らかい方で、こんな状況でテンパっている私に対して、とても優しく声を掛けてくれた。

お母さんの雰囲気から察するに、樹さんの状態はそんなに悪くなさそうだ。

“天城樹”と書かれた病室の前に着くと、お母さんはノックをして扉を開けた。
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