夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「すみません私ったら、つまらない話をーー」
「いや、よくわかる。問題ない、普通に会話できるじゃないか」
笑みを落とした彼にドキッとした。全然頭を使ってないけど、たしかに流れるように話せている。これが普通の会話か。
彼はさらに続けた。
「ちなみにオリオン座のどの星が好き? 俺はベテルギウス。一番明るいから」
「はい、私もベテルギウスです。でも間違っていますよ。一番明るいのはリゲルです」
なにか言いたげなマスターに気づいて私はハッとして唇を押さえた。まただ。知らないふりをできず、神代さんの間違いを指摘してしまった。どうしよう。
「神代さん、すみません」
謝ってはさらに男性のプライドを傷つけるというものだろうか。ああもう、私って全然ダメだ。やらかしてばっかり。
しかし落ち込む私の隣で、神代さんはクックッと笑っている。そして「最高」とつぶやいた。
「神代さん?」
「ありがとう。そう、リゲルだね。間違いがあれば指摘するのはあたり前だ。一時のプライドで学びの機会を棒に振るようなくだらない男は放っておけばいい。きみに相応しくない」