夫婦未満ですが、子作りすることになりました

強引な言葉が耳もとで甘く響く。手は離されず、それどころか体を持っていかれて前のめりになった。体に火が点きそうなほどビックリして、椅子の足掛け部分にひっかけていたヒールの足が落ち、神代さんの胸板に抱きとめられる。

「す、すみません」

さらに恥ずかしい体勢。それでも体は離れず、整った顔は私を見つめ続けていた。その瞳はよく見ると情熱的に揺れており、思わず釘付けになった。

「好きな星座は?」

瞳に囚われながら質問が続く。それって今この体勢で聞かなきゃならないこと?

「オリオン座です」

「いいね。俺も好きだ。オリオン座を見るとき、いつもなにしてる?」

神代さんがあまりに矢継ぎ早に質問を投げてくるため、首をかしげる時間すらない。考えることで精一杯だ。オリオン座を見るときはなにをしているだろう。たしか冬の夜だ。

「大学の研究を終えて家に帰るときが多かったです。息が白くなるほど寒くてマフラーをずり上げて。家に着いたら温かいココアを飲もうって考えながら」

話していて恥ずかしくなり、今度こそ彼の腕から逃れ、席に座り直した。体がプルプル震えている。自分が自分ではないみたい。頭の中に浮かんだことをそのまま話すなんて。
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